パウロとローマのキリスト信仰者たち(その2)
パウロは、
ローマに住んでいたキリスト信仰者を何人も知っていたにもかかわらず、
ローマの教会(信徒の群れ)について個人的には知りませんでした。
モーセの律法について従来の立場を守る人々と、
自由な福音を代表する人々との間の緊張が高まりつつありました。
「ガラテアの信徒への手紙」や「コリントの信徒への手紙」は、
この状況を明らかに反映しています。
おそらくローマのキリスト信仰者たちは、
一つの教会を構成していたのではなくて、
多くの小さな集まりがあったものと思われます。
そして、それらを最初の頃から指導していたのは、
旧約聖書を知悉するユダヤ人たちであったものと思われます。
パウロはこの手紙で、
異邦人(非ユダヤ人)にもユダヤ人にも話しかけています。
おそらく、ローマの教会(信徒の群れ)の特色は、基本的には、
キリスト教徒になったユダヤ人の考え方に沿ったものだったでしょう。
彼らに対して、パウロは 、
言葉を選びつつ、穏やかな態度で、この手紙を書いています。
「ローマの信徒への手紙」では、パウロは、
「ガラテアの信徒への手紙」や「コリントの信徒への手紙」の場合とは異なり、
教会におけるキリスト教徒の正しくない振る舞いを取り扱う必要がありません。
このため、パウロは、手紙の読者の意見に耳を傾け、
起こりうる反論に対しても落ち着いて注意を払っています。
パウロは、ローマのキリスト信仰者たちに、
彼が異邦人に宣べ伝えている福音を紹介します。
まさにこの特徴のために、
「ローマの信徒への手紙」は、私たちにとって、
真の意味でのパウロの遺言である、とも言えます。