イエス様とペテロ 21章15~19節(その1)
かつて公然とイエス様を否認したペテロがイエス様と出会うシーンは、
とりわけ強い印象を与える、心理学的にみても非常に興味深いものです。
その場には他の人も居合わせましたが、
この二人の間には入れない部外者扱いでした。
ペテロとイエス様は互いに深く見つめ合います。
この箇所では、
ペテロの否認や、ペテロの人生にこれから起こることが、
そのテーマとなっています。
三度ペテロが、「私はイエスを知らない」、と言ったように、
ここでイエス様は、三度ペテロに、
「あなたは私を愛していますか」、と質問します。
三度目の質問の後で、ペテロはついに悲しみに沈みます。
ペテロと主との関係が実際はどのようなものか、
今や明らかになったのです。
イエス様の三つの質問は、
牧者として働く上での三つの勧告でもありました。
「ヨハネによる福音書」10章の「よい羊飼い」についてのたとえと、
その背景にある旧約聖書の箇所(とりわけ「エゼキエル書」34章)とを
思い起こしましょう。
不適格な牧者は自分のことばかり気にかけて、
自分にゆだねられた羊の群れの世話を怠ります。
しかし、
主が御自分に属する者たちの牧者になられると、
状況がすっかり変わります。
復活の主は、
群れの世話をするための手段として人間を用いられます。
四つの福音書を通じて弟子たちの指導者として描かれるペテロには、
他の弟子たちに対してよりも責任の重い使命が与えられています。
牧者の仕事、とりわけペテロの大切な特別任務を遂行するためには、
主を愛する心が不可欠です。
ペテロは確かに、
「イエス様のことを知らない」、と三度も人前で否定しましたが、
そんなペテロをイエス様はもう一度伝道のために派遣しようとされます。
この派遣の際に、イエス様はペテロに謎めいたことを言われます。
そしてその意味はずっと後になってから明らかになります。