2009年10月9日金曜日

マルコによる福音書について 15章1~5節

苦しまれるキリスト

マルコによる福音書15章


沈黙を守る被告 15章1~5節

イエス様はユダヤ人たちの大議会の面前で裁かれました。大議会はイエス様に対して死の宣告を下したのですが、それは越権行為でもありました。それで、大議会はイエス様をローマ人の地区総督ポンテオ・ピラトの裁決にゆだねました。このピラトの職歴については正確なことはわかりません。はっきりしているのは、ピラトは皇帝ティベリウスの反ユダヤ的政策の時期にユダヤの地区総督に任命された、ということです。当時、ユダヤ人たちの支配者として、支配の対象であるユダヤ人たちを軽蔑し、必要とあらばどんな手段も辞さないような峻酷な人物が総督として任命されるのは、帝国の歓迎するところでした。西暦26年から36年までこの職にあったピラトは多くの流血事件を引き起こしたことで有名です。ローマへの反乱を少しでもかぎつけると、ピラトは情け容赦のない処置をとりました。(歴史家ヨセフスが伝える)聖なる山に結集したサマリヤ人たちや、(ルカによる福音書が伝える(13章1節))神殿の犠牲の儀式を行ったと思われるガリラヤ人たちなどが、そうした粛清による犠牲者たちの一例です。ローマで反ユダヤ的な傾向が収まると、ユダヤ人に対するある流血事件を起こしたピラトは、取り調べの結果、総督職を失い、左遷されました。ピラトはイエス様にひとつの核心を突く質問をしました。イエス様はそれに対して短く、しかも二通りの解釈ができるような、「それはあなたが言ったことです。」という返事をなさいました。「イエス様がローマ帝国に反旗を翻す王になったのかどうか」についてピラトがイエス様から引き出した答えはたったこれだけでした。イエス様は御自身に向けられたひどい誹謗中傷に一切弁明なさらず、ただ黙って聞いておられました。ユダヤ人は異邦人とは話したがらないものでしたし、ユダヤ人の自由のために戦った勇士たちが、尋問を受けているときにも、彼らが死にいたるまで守り抜いた確固たる態度を崩さなかったことを、ピラトもきっと耳にしていたことでしょう。にもかかわらず、拷問死を拒もうとはしないこの男は、ピラトには奇妙に映りました。ピラトが次のイザヤ書の予言をしっていたとしたら、どう思ったことでしょうか。「主は私たちのすべての罪の負債をこの方の上に投げかけられました。この方は虐げられ、それを甘んじて受けられ、口を開かれませんでした。ちょうどほふり場にひかれていく小羊のようであり、また、毛を刈り取る者たちの前で黙っている羊のように、この方は口を開かれませんでした。」(イザヤ書53章6~7節より)