2013年11月6日水曜日

「ヨハネによる福音書」ガイドブック 18~19章 受苦に関する四つの記載


イエス様の受苦について

「ヨハネによる福音書」1819


受苦に関する四つの記載

これから、「ヨハネによる福音書」に基づいて、
イエス様の受苦の出来事を追っていくことにしましょう。
この出来事の核心部分は、
四つの福音書(マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ)に共通しています。
その一方で、それぞれの福音書には独自の強調点と細部があります。
最古の福音書と考えられている「マルコによる福音書」は、
他の福音書の成立にも影響を与えていると考えられます。
しかし、どの福音書も独自の資料にもとづいているのは確かです。
これは、
すべての福音書の成立の背景には
イエス様の受苦の出来事を目撃した者たちによる確実な伝承があった、
という証拠でもあります。

「ヨハネによる福音書」は、
少なくとも「マルコによる福音書」を知った上で書かれていると思われます。
それゆえ、
他の福音書ですでに語られていることがらのいくつかは、
この福音書では省略されているのです。
とても重要な箇所さえも記述されていない場合があります。
例えば、すでに述べた聖餐式の設定の箇所もそうですし、
ゲッセマネでのイエス様の祈りの戦いや、
イエス様がユダヤ人の最高議会で尋問を受けるシーンもそうです。
一方では、
「ヨハネによる福音書」は、独自の資料に基づいて、
他の福音書では語られなかったことについても記述しています。
例えば、
イエス様が捕らえられる前のせめぎあいで
イエス様を守るために剣を抜いた弟子はペテロであり、
またペテロに傷を負わされた僕の名はマルコスだったことなどです。


「ヨハネによる福音書」におけるイエス様の受苦への道のりの記述では、
イエス様の偉大さが前面に出ています。
キリストの人間的な面、悲しみや驚愕などについては、
すでに以前記されています。
今や神様の御子は、死へと向かって毅然とした態度で赴かれます。
イエス様を捕らえるために来た者たちは後ずさり、地に倒れます。
ピラトは恐れを抱きます。
しかし、あらかじめ人の子は、
受苦への道の歩みをことごとく知っておられたのです。