2011年4月20日水曜日

「コリントの信徒への第一の手紙」13章 位置の問題

   
13章の位置の問題
  
多くの研究者は、「今の13章は元々とは違う場所に置かれている」、と考えています。
12章でも14章でも、パウロは恵みの賜物について語っています。
それに基づき彼らは、「13章はパウロの死後にこれらの章の間に配置されたのだ」、と主張します。
また、「おそらくパウロは12章と14章との間に、彼自身かあるいは誰か他の人が以前に書いたものを配置したのだ」、と考える研究者もいます。
一方では、「この13章は私たちの聖書の中でまさに本来の正しい場所に位置しており、パウロがこの「コリントの信徒への第一の手紙」のために書いた箇所にほかならない」、と考える研究者も大勢います。
 
問題を解く鍵となるのは、12章の最後の箇所です。
これは12章と13章とを結び付けています。
今扱おうとしているこの13章は、手紙の他の部分と内容的に逸脱してはいないのです。
ここで愛が話題になるのは、パウロが時にはコリントの信徒間の争い以外のことについて話したいと思ったからではありません。
愛のテーマを扱っている理由は、まさにこれがコリントの教会の難問だったからです。
コリントの教会では各々が自分自身の恵みの賜物を用いて、それをとりわけ大事にしていました。
クリスチャンの生活は大きな賜物を駆使することにほかならない、と考えられていたからです。
しかし、これは的の外れた考え方です。
あらゆることの基底であり出発点であるべきなのは、愛です。
それをコリントの教会は忘れていました。
その結果、人々は恵みの賜物を誤ったやり方で自己中心的に用いるようになったのです。
また、そこから教会員同士の諍いも生まれたのです。
13章では、コリントの信徒たちの問題と彼ら特有の罪の傾向について常に注意が向けられています。
それゆえ、この箇所がコリントの信徒たちに向けられたパウロの筆によるものであることを信じない理由はなにもありません。
要するに、13章は前後の章と関連させて読まれるべきものだ、ということです。