表題 「ハバクク書」1章1節
「預言者ハバククが見た神の託宣。」
(「ハバクク書」1章1節、口語訳)
「ハバクク書」の預言全体の導入部はとても簡潔に書かれています。
「託宣」(1章1節)は原語のヘブライ語では「マッサー」といいます。
この言葉には「重荷」という別の意味もありますが、
「エレミヤ書」によれば
後者の意味でこの言葉を使用する預言者は主によって罰せられます。
「この民のひとり、または預言者、または祭司があなたに、
『主の重荷はなんですか』と問うならば、彼らに答えなさい、
『あなたがたがその重荷です。
そして主は、あなたがたを捨てると言っておられます』と。
そして、『主の重荷』と言うその預言者、祭司、または民のひとりを、
その家族と共にわたしは罰する。」
(「エレミヤ書」23章33〜34節、口語訳)
「託宣」はイスラエル以外の何か他の対象についての
予言を表す言葉として用いられるのが一般的でした。
そして「ハバクク書」の数々の予言の大部分もバビロニアに関わるものでした。
「ハバクク」に該当するアッカド語の「ハッバクーク」には
「園の植物」という意味があります。
旧約聖書の大部分はヘブライ語で書かれており、
アッカド語はヘブライ語と同じセム語族に属する古代言語です。
セム語には「語根」と呼ばれる三個のアルファベットの組み合わせが
それから派生する様々な単語の基本的な意味を規定するという特徴があります。
また「ハバクク」と同じ語根から派生したヘブライ語の動詞「ハーバク」には
「抱きしめる」や「手で掴む」という意味があります。
人名としての「ハバクク」にも
そのような意味が込められているとも考えられます。