オネシモの事件 8〜22節(その5)
オネシモにはお金を主人に返還すべき手立てがないことを、
パウロは知っていました。
だからこそ、使徒パウロは
オネシモの負債を彼が肩代わりすることをフィレモンに提案したのです。
といってもこれは、
パウロ自らオネシモの負債全額をフィレモンに支払う、
という意味ではありません。
囚人の身であるパウロにしたところで、
大金を工面するあてなどなかったのですから。
フィレモンはパウロに対してある「負債」がありました。
それは、お金で量るにはあまりにも膨大な負債でした。
かつてパウロはフィレモンに福音を宣べ伝えました。
その福音によってフィレモンは神様の子どもとなり、
天の御国を継ぐ者とされました。
フィレモンが神様からいただいた
信仰の賜物の圧倒的な素晴らしさにくらべれば、
オネシモが掠めたかもしれない金額や、
オネシモのせいで生じた損失などは、
たとえそれがどれほど大きなものであったとしても、
取るに足らないものになります。
フィレモン自身の抱えていた「負債」と
オネシモがフィレモンに対して抱えた負債とを較べてみるように、
とパウロはフィレモンを促します。
そうすることで、フィレモンは
オネシモの負債の件を快く忘れることができるようになると思われるからです。