2022年2月9日水曜日

「ヤコブの手紙」ガイドブック 離散している神様の御民 「ヤコブの手紙」1章1節

 離散している神様の御民 「ヤコブの手紙」1章1節

 

「神と主イエス・キリストとの僕ヤコブから、

離散している十二部族の人々へ、あいさつをおくる。」

(「ヤコブの手紙」1章1節、口語訳)

 

ヤコブは誰に向けてこの手紙を書いているのでしょうか。

「離散している十二部族の人々」とは誰のことでしょうか。

考えられる答えは三つあります。

 

1)ユダヤ人

2)ユダヤ人キリスト信仰者

3)すべてのキリスト信仰者

 

第一にヤコブがユダヤ人を意味していたはずはありません。

なぜなら彼と彼の反対者たちとの間には

「イエス様こそ主なり」という共通の信仰があったからです(2章1節)。

ですからヤコブはユダヤ人を

「わたしの兄弟たち」(1章2節)と呼ぶはずがないのです。

二番目と三番目の答えのうちでどちらを選ぶかは研究者によって異なります。

 

三番目の選択肢によれば、

すべての新しいイスラエル、すなわち「ディアスポラ」

(我が家を失い離散した環境)の中で生きているキリスト教会のことを

ヤコブは意味していると考えることができます。


バビロン捕囚の終わった後(紀元前538年)、

ユダヤ人は次の二つのグループに分かれました。

この状態は今もなお続いているとも言えます。

 

1)地中海の東の端にあるイスラエルの地に居住するユダヤ人

2)イスラエルの地以外の様々な場所で散り散りに、

いわば「ディアスポラ」の中で生活するユダヤ人

 

大部分のユダヤ人たちと同じように

キリスト信仰者たちもまた全員が「我が家」から離れた状態で暮らしています。

天の御国だけが彼らにとっての唯一の真の故郷だからです

(「コリントの信徒への第二の手紙」5章1〜7節、特に6節)。

 

エルサレムの最初期の教会はキリスト教会全体の中で指導的な立場にありました。

エルサレム教会で重きをなしたヤコブやペテロは

ユダヤ人伝道に取り組みましたが、

それでもなお彼らの書いた手紙には

すべてのキリスト信仰者に向けられたメッセージが含まれているのはたしかです

(「ガラテアの信徒への手紙」2章1〜10節)。