2021年6月9日水曜日

「ヨナ書」ガイドブック ニネヴェの恩赦 3章10節

ニネヴェの恩赦 3章10節

「神は彼らのなすところ、その悪い道を離れたのを見られ、

彼らの上に下そうと言われた災を思いかえして、これをおやめになった。」

(「ヨナ書」3章10節、口語訳)

 

神様が御自分の預言者たちの活動を通していったい何を目指されていたのか

この節からわかります。

神様が預言者たちを遣わされた目的は、

御自分の民を断罪する裁きの宣告を下すことではありませんでした。

そうではなく、

御自分の民が悔い改めて

まちがった道から神様の御許に立ち戻るようにさせることだったのです。

このことについて主は「エレミヤ書」で次のように言っておられます。

 

「ある時には、わたしが民または国を抜く、破る、滅ぼすということがあるが、

もしわたしの言った国がその悪を離れるならば、

わたしはこれに災を下そうとしたことを思いかえす。」

(「エレミヤ書」18章7〜8節、口語訳)。

 

イスラエルやユダに遣わされた主の預言者たちは

彼らの宣教が実を結ぶのを実際に目にする機会がほとんどまったくありませんでした。

それとは異なり、

ヨナの伝えたメッセージはニネヴェの人々に受け入れられたのです。 

 

このことを考慮に入れると

「ヨナはよい預言者でもありダメな予言者でもあった」

と言ってもよいのではないかと思います。

ヨナの予言した「主の裁き」は実現しませんでした。

にもかかわらず、ヨナの預言者としての活動には深い意味が隠されていたからです。

 

10節の英語の翻訳を見てみると

"repent"(神様は悔いた)という訳もあれば

"relent"(神様は和らいだ)という訳もあります。

 

人間はまちがったことを行ってしまったときには「悔いる」ものですが、

神様はこのような意味では、人間のようには「悔い」ません。

これは適切な翻訳が難しい箇所ですが、

次に引用する「ペテロの第二の手紙」3章9節が参考になるのではないでしょうか。

 

「ある人々がおそいと思っているように、

主は約束の実行をおそくしておられるのではない。

ただ、ひとりも滅びることがなく、すべての者が悔改めに至ることを望み、

あなたがたに対してながく忍耐しておられるのである。」

(「ペテロの第二の手紙」3章9節、口語訳)

 

神様の御心に違反することがどのような結果を招くのかを

神様は教えてくださいました。

神様に従いたいのか、それとも従いたくないのか、

このどちらを選ぶのかは人間の側の問題になります。

人間が何を行うかにはかかわりなく、

神様は常に御自分の聖なる御心に従って活動なさいます。

これについては次に引用する「ヨシュア記」の箇所が参考になるでしょう。

 

「それゆえ、いま、あなたがたは主を恐れ、

まことと、まごころと、真実とをもって、主に仕え、

あなたがたの先祖が、川の向こう、およびエジプトで仕えた他の神々を除き去って、

主に仕えなさい。

もしあなたがたが主に仕えることを、こころよしとしないのならば、

あなたがたの先祖が、川の向こうで仕えた神々でも、

または、いまあなたがたの住む地のアモリびとの神々でも、

あなたがたの仕える者を、きょう、選びなさい。

ただし、わたしとわたしの家とは共に主に仕えます」。

その時、民は答えて言った、

「主を捨てて、他の神々に仕えるなど、われわれは決していたしません。

われわれの神、主がみずからわれわれと、われわれの先祖とを、

エジプトの地、奴隷の家から導き上り、

またわれわれの目の前で、あの大いなるしるしを行い、

われわれの行くすべての道で守り、

われわれが通ったすべての国民の中でわれわれを守られたからです。

主はまた、この地に住んでいたアモリびとなど、すべての民を、

われわれの前から追い払われました。

それゆえ、われわれも主に仕えます。

主はわれわれの神だからです」。

しかし、ヨシュアは民に言った、

「あなたがたは主に仕えることはできないであろう。

主は聖なる神であり、ねたむ神であって、

あなたがたの罪、あなたがたのとがを、ゆるされないからである。

もしあなたがたが主を捨てて、異なる神々に仕えるならば、

あなたがたにさいわいを下されたのちにも、

ひるがえってあなたがたに災をくだし、あなたがたを滅ぼしつくされるであろう」。

民はヨシュアに言った、

「いいえ、われわれは主に仕えます」。

そこでヨシュアは民に言った、

「あなたがたは主を選んで、主に仕えると言った。

あなたがたみずからその証人である」。

彼らは言った、

「われわれは証人です」。ヨシュアはまた言った、

「それならば、あなたがたのうちにある、異なる神々を除き去り、

イスラエルの神、主に、心を傾けなさい」。

民はヨシュアに言った、

「われわれの神、主に、われわれは仕え、その声に聞きしたがいます」。

「ヨシュア記」24章14〜24節、口語訳