2020年12月9日水曜日

「ルツ記」ガイドブック 取り払われる障害 「ルツ記」4章1〜12節(その1)

 取り払われる障害 「ルツ記」4章1〜12節(その1)

 

当時、イスラエル人の町の門(4章1節)は

モーセの律法に基づく民事・刑事上の裁判を行う場でもありました。

そこで合法的な裁定を下すためには

十人の長老が裁判に臨席する必要がありました(4章2節)。

現代でもユダヤ教の会堂(シナゴーグ)での礼拝を行うためには

最低10人の成人男子が参加する必要があります。

当時の町は城壁で囲まれていたため、

門を通過しなければ町の中に入ることができませんでした。

それゆえ、会いたいと思っている特定の個人を探すときには、

門の近辺でその人を見かける可能性が高かったのです。

こうしてボアズもちょうど探していた親戚を見つけることができました。

 

「ボアズは親戚の人に言った、

「モアブの地から帰ってきたナオミは、

われわれの親族エリメレクの地所を売ろうとしています。」」

(「ルツ記」4章3節、口語訳)

 

上記のボアズの発言は、

今ナオミは自分の畑を売りたがっているという意味ではなく、

エリメレクがモアブに出立するときに所有する畑を売った

という過去の事実に関わるものです。

ベツレヘムに帰郷したナオミは

その畑を自分の一族の土地として買い戻す(すなわち贖う)ことを願いました

(4章4節)。

それを実現するためには

「ヨベルの年」までにその畑から収穫できるはずの穀物に相当する分量を、

現在の畑の所有者に支払う義務がありました。

おそらくこの出来事があった時点では

「ヨベルの年」はまだ何年も先のことだったと思われます。

「ヨベルの年」とは、

50年に1度すべての土地が本来の所有者に返還されて

イスラエル人の間の貸借関係が帳消しになる大恩赦の年のことです。

「レビ記」25章にはそれについて詳細な記述があります。

 

「あなたは安息の年を七たび、

すなわち、七年を七回数えなければならない。

安息の年七たびの年数は四十九年である。

七月の十日にあなたはラッパの音を響き渡らせなければならない。

すなわち、贖罪の日にあなたがたは全国にラッパを響き渡らせなければならない。

その五十年目を聖別して、

国中のすべての住民に自由をふれ示さなければならない。

この年はあなたがたにはヨベルの年であって、

あなたがたは、おのおのその所有の地に帰り、

おのおのその家族に帰らなければならない。

その五十年目はあなたがたにはヨベルの年である。

種をまいてはならない。また自然に生えたものは刈り取ってはならない。

手入れをしないで結んだぶどうの実は摘んではならない。

この年はヨベルの年であって、あなたがたに聖であるからである。

あなたがたは畑に自然にできた物を食べなければならない。

このヨベルの年には、おのおのその所有の地に帰らなければならない。

あなたの隣人に物を売り、また隣人から物を買うときは、互に欺いてはならない。

ヨベルの後の年の数にしたがって、

あなたは隣人から買い、彼もまた畑の産物の年数にしたがって、

あなたに売らなければならない。

年の数の多い時は、その値を増し、

年の数の少ない時は、値を減らさなければならない。

彼があなたに売るのは産物の数だからである。

あなたがたは互に欺いてはならない。あなたの神を恐れなければならない。

わたしはあなたがたの神、主である。」

(「レビ記」25章8〜17節、口語訳)

 

「あなたの兄弟が落ちぶれてその所有の地を売った時は、

彼の近親者がきて、兄弟の売ったものを買いもどさなければならない。

たといその人に、それを買いもどしてくれる人がいなくても、

その人が富み、自分でそれを買いもどすことができるようになったならば、

それを売ってからの年を数えて残りの分を買い手に返さなければならない。

そうすればその人はその所有の地に帰ることができる。

しかし、もしそれを買いもどすことができないならば、

その売った物はヨベルの年まで買い主の手にあり、

ヨベルにはもどされて、その人はその所有の地に帰ることができるであろう。」

(「レビ記」25章25〜28節、口語訳)