2020年12月2日水曜日

「ルツ記」ガイドブック ルツの求婚 「ルツ記」3章1〜18節(その3)

 ルツの求婚 「ルツ記」3章1〜18節(その3)

  

しかし、ボアズにはひとつの問題が残っていました。

彼はルツを妻として迎える権利を有する「最も近しい親戚」

ではなかったのです(12節)。

正しい順序を守るなら、まず、その最も近しい親戚に

ルツを妻とする意思があるかどうかを尋ねるべきなのです。

その人がルツと結婚する意思がないことを確認した上で、

ようやくボアズはルツと結婚することができるのです(13節)。

 

ボアズはルツが今晩彼のもとを訪れたことを

他の誰にも知られないようにするために細心の注意を払いました(14節)。

仮にもうひとりの「縁者」がルツを妻として迎えることになった場合には、

ルツがボアズとの姦淫の罪の疑いを持たれないように

しなければならなかったからです。

 

また、旧約聖書についてのユダヤ教の釈義書「ミシュナー」によれば、

イスラエル人の男が異邦人の女と性的関係をもった場合には、

彼は「縁者」としての使命を果たす権利を失います。

このようにボアズの立場からみても

「ボアズはルツと姦淫したかもしれない」

という疑いをもたれないようにすることが不可欠だったのです。

 

「そしてボアズは言った、

「あなたの着る外套を持ってきて、それを広げなさい」。

彼女がそれを広げると、ボアズは大麦六オメルをはかって彼女に負わせた。」

(「ルツ記」3章15節より、口語訳)

 

ボアズがルツに与えた穀物の量がどれほどであったのか、私たちは知りません。

ヘブライ語原版では「シェーシュ(六)・セオリーム(大麦)」

とだけ記されています。

ラビ文献は2エパであったとしています。

しかし、これは現代の尺度で言えば約60〜80リットルに相当し、

一人の女性が服に包んで運ぶにはあまりにも多すぎるし重すぎます。

 

おそらくボアズは脱穀場に朝までとどまり、

そのもうひとりの「縁者」と会うために町の門のところに出向いたのでしょう

(「ルツ記」4章1節)。

 

ナオミは戻ってきたルツに「娘よ、どうでしたか」と呼びかけます

(4章16節)。

3章18節や2章8節でもナオミは実の娘ではないルツのことを

「娘」と呼んでいます。

また、ボアズはナオミの亡き夫エリメレクのことを

「私たちの兄弟」と呼んでいます(4章3節)。

後に、ナオミはルツがボアズに生んだ男の子を引き取り、

我が子として養い育てることになります。

近所の女たちは「ナオミに男の子が生れた」と言って、彼に名をつけ、

「オベデ」と呼びました(4章17節)。

これらの例からもわかるように、

中近東の地域では「息子」「娘」「父親」「母親」といった呼称は

遠い親戚にあたる人々に対しても用いられていました。

 

「ルツ記」の構成はきわめて巧みです。

たとえば、各章のおわりにはその次の章の出来事が予告されています。

「ルツ記」の1章22節と2章、2章23節と3章、3章18節と4章

というつながりに注目してみてください。