2020年9月2日水曜日

「ルツ記」ガイドブック 死ぬまで変わらぬ友愛 「ルツ記」1章6〜18節(その3)

 死ぬまで変わらぬ友愛 「ルツ記」1章6〜18節(その3)

 

イスラエルの地に移住することは、

モアブの主神ケモシュを捨てることでもありました(15節)。

ルツにはそうすることも辞さない覚悟がありました。

エリメレクの家族は全能なる神様の働きかけによって

モアブの地で過酷な不幸にさらされました。

にもかかわらず、

他ならぬこのイスラエルの神様御自身が

ルツにも深い影響を及ぼされたのです。

前掲の1章13、20〜21節でナオミがルツに言ったことを

ここで思い起こしてください。

 

ところが、ルツはナオミに次のように答えます。

 

「あなたの死なれる所でわたしも死んで、そのかたわらに葬られます。

もし死に別れでなく、わたしがあなたと別れるならば、

主よ、どうぞわたしをいくえにも罰してください。」

(「ルツ記」1章17節、口語訳)

 

この節には、ナオミに対するルツの深い友愛と信頼が美しく描かれています。

ルツには一切を投げ捨てて先行きのまったく見えない未来に向かって

姑と共に歩みだす決死の覚悟がありました。

 

イスラエル人と異国人の間のこのような深い友愛の絆は、

以下に引用するダヴィデ王とガテ人イッタイの間にもありました。

これは自分の息子アブサロムの謀反によって都落ちを余儀なくされた

ダヴィデ王にまつわるエピソードです。

 

「時に王はガテびとイッタイに言った、

「どうしてあなたもまた、われわれと共に行くのですか。

あなたは帰って王と共にいなさい。

あなたは外国人で、また自分の国から追放された者だからです。

あなたは、きのう来たばかりです。

わたしは自分の行く所を知らずに行くのに、

どうしてきょう、あなたを、われわれと共にさまよわせてよいでしょう。

あなたは帰りなさい。

あなたの兄弟たちも連れて帰りなさい。

どうぞ主が恵みと真実をあなたに示してくださるように」。

しかしイッタイは王に答えた、

「主は生きておられる。

わが君、王は生きておられる。

わが君、王のおられる所に、死ぬも生きるも、しもべもまたそこにおります」。

ダビデはイッタイに言った、

「では進んで行きなさい」。

そこでガテびとイッタイは進み、

また彼のすべての従者および彼と共にいた子どもたちも皆、進んだ。

国中みな大声で泣いた。

民はみな進んだ。

王もまたキデロンの谷を渡って進み、民は皆進んで荒野の方に向かった。」

(「サムエル記下」15章19〜23節、口語訳)

 

最終的にオルパは自分の国に帰ることを選びました(14節)。

その後彼女がどうなったのか、私たちは知りません。

人間的な見地からすると、

ナオミに従ってエルサレムに向かうことにしたルツの選択にくらべて、

オルパの決断ははるかに理にかなったものでした。

しかし、ルツのその後の人生は重大な意味を帯びることになりました。

彼女はダヴィデ王の、さらにはメシア(救い主)の先祖の母にもなったからです

(「マタイによる福音書」1章1〜5節)。

人間の理性に従った決断と神様の御心とは

必ずしも常に調和するものではありません。

神様は私たちに理性的な考え方を捨てるように指図されるわけではありませんが、

時として理性は神様の御心に反した判断を下す場合があることは

覚えておくべきでしょう。