2020年9月23日水曜日

「ルツ記」ガイドブック ボアズの畑で 「ルツ記」2章1〜16節(その2)

ボアズの畑で 「ルツ記」2章1〜16節(その2)

「ルツは行って、刈る人たちのあとに従い、畑で落ち穂を拾ったが、

彼女ははからずもエリメレクの一族であるボアズの畑の部分にきた。」

(「ルツ記」2章3節、口語訳)

 

この節に出てくる「はからずも〜した」という表現は、ヘブライ語原文では、

動詞「カーラー」(出くわす)と名詞「ミクレー」(出来事)という

同じ語根からなる二つの単語による重語的表現(figura ethymologica)です。

これは「偶然にも、ルツはボアズの畑で落ち穂拾いをすることになった」

という意味ではありません。


神様の世界にはいかなる「偶然」も存在しません。

一切の出来事は神様のお許しの下に生起しているからです。

神様はこれから私たちに起こる事柄についても

そのすべてをあらかじめご存知です。


次の引用箇所からもわかるように、

人間の目には偶然に映ることも実際には神様の導きの下にあるのです。

 

「しゅうとめは彼女に言った、

「あなたは、きょう、どこで穂を拾いましたか。どこで働きましたか。

あなたをそのように顧みてくださったかたに、どうか祝福があるように」。

そこで彼女は自分がだれの所で働いたかを、しゅうとめに告げて、

「わたしが、きょう働いたのはボアズという名の人の所です」と言った。

ナオミは嫁に言った、

「生きている者をも、死んだ者をも、顧みて、いつくしみを賜わる主が、

どうぞその人を祝福されますように」。

ナオミはまた彼女に言った、

「その人はわたしたちの縁者で、最も近い親戚のひとりです」。」

(「ルツ記」2章19〜20節、口語訳)

 

ルツの履歴はベツレヘムの村の全住民に知られていました

(「ルツ記」1章19節、2章6節)。

当時、小さい村の住人に関する情報や噂は瞬く間に広まったからです。

しかし、はじめボアズはルツのことを、

最近ベツレヘムに帰ってきたナオミが一緒に連れてきたモアブ人女性であるとは

認識していなかったようです(5〜6節、11節)。

 

ルツが全力で仕事に打ち込む姿勢(7節)は、

彼女がモアブの地でナオミを助けた時すでに発揮されていました。

ボアズを含めベツレヘムの住民たちは皆このことを知っていました(11節)。

彼女の熱心な仕事ぶりは、

彼女に対してボアズが示す態度にも好ましい影響を与えたものと思われます。

これは、まもなくボアズがルツに

モーセの律法規定が認めているよりも多くの権利を与えたことからもわかります。

 

「食事の時、ボアズは彼女に言った、

「ここへきて、パンを食べ、あなたの食べる物を酢に浸しなさい」。

彼女が刈る人々のかたわらにすわったので、ボアズは焼麦を彼女に与えた。

彼女は飽きるほど食べて残した。

そして彼女がまた穂を拾おうと立ちあがったとき、

ボアズは若者たちに命じて言った、

「彼女には束の間でも穂を拾わせなさい。

とがめてはならない。

また彼女のために束からわざと抜き落しておいて拾わせなさい。

しかってはならない」。」

(「ルツ記」2章14〜16節、口語訳)

 

「人は自分のまいたものを、刈り取ることになる」

(「ガラテアの信徒への手紙」6章7節より、口語訳)

という御言葉がここで実現しています。

ルツは姑のナオミに対して神様の御言葉に基づく正しい態度を貫きました。

そして、今度はルツがそのよき行いに相応しい正当な待遇を

ボアズから受けることになったのです。ボアズはルツに次のように言います。

 

「どうぞ、主があなたのしたことに報いられるように。

どうぞ、イスラエルの神、主、

すなわちあなたがその翼の下に身を寄せようとしてきた主から

じゅうぶんの報いを得られるように。」

(「ルツ記」2章12節、口語訳)