2020年9月16日水曜日

「ルツ記」ガイドブック ボアズの畑で 「ルツ記」2章1〜16節(その1)

新たな未来 「ルツ記」2章〜4章

 

ボアズの畑で 「ルツ記」2章1〜16節(その1)

 

ボアズはエリメレクの親戚でした。

「ルツ記」2章の冒頭にはボアズに関する説明があります。

そして、この人物こそが

ルツとナオミを苦境から救い出してくれる英雄であることが

ここですでに予告されているとも言えます。

 

「ボアズ」という名前にどのような意味が込められているのか、

確かなことはわかりません。

「力」や「速さ」などに関係する意味である可能性はあります。

辞書によっては「神殿の前面にある青銅の柱」を意味する言葉ともされています。

ユダヤ教のラビ文献の伝承によれば、

ボアズはエリメレクの兄弟の息子とされています。

しかし、これは的外れな推測でしょう。

そうだとすると、

ボアズはナオミたちにとって非常に近しい親戚ということになりますが、

ボアズはルツに

「たしかにわたしは近い親戚ではありますが、

わたしよりも、もっと近い親戚があります。」

(「ルツ記」3章12節、口語訳)と言っているからです。

ちなみに、ボアズの名は

新約聖書に収められているイエス様の二つの系図の両方に挙げられています

(「マタイによる福音書」1章5節、「ルカによる福音書」3章32節)。

 

「レビ記」19章9〜10節、および以下に挙げるモーセの律法の規定によれば、

畑をすっかり空にしてしまうほど穀物を収穫し尽くすことは許されていません。

寄留の他国人や孤児や寡婦たちのためにも

畑に穀物の一部を残しておくべきであるとされていたからです。

 

「あなたがたの地の穀物を刈り入れるときは、

その刈入れにあたって、畑のすみずみまで刈りつくしてはならない。

またあなたの穀物の落ち穂を拾ってはならない。

貧しい者と寄留者のために、それを残しておかなければならない。

わたしはあなたがたの神、主である。」

(「レビ記」23章22節、口語訳)

 

「あなたが畑で穀物を刈る時、

もしその一束を畑におき忘れたならば、

それを取りに引き返してはならない。

それは寄留の他国人と孤児と寡婦に取らせなければならない。

そうすればあなたの神、主はすべてあなたがする事において、

あなたを祝福されるであろう。」

(「申命記」24章19節、口語訳)

 

ところが実際には、畑の所有者の多くはこの規定を守りませんでした。

それどころか、彼らは社会的に弱く貧しい立場にある人々が

地面にこぼれ落ちた穀物の残りを拾い集めるのを妨げさえしました。

 

「その時ボアズは、ベツレヘムからきて、刈る者どもに言った、

「主があなたがたと共におられますように」。

彼らは答えた、「主があなたを祝福されますように」。」

(「ルツ記」2章4節、口語訳)

 

神様に対するボアズの深い信頼は、

ボアズと使用人たちとが互いに神様の祝福を願い合う態度にも

よくあらわれています。

このことからもわかるように、ボアズは義と律法を重んじる人でした。

だからこそ、ルツはボアズの畑から落ち穂を拾い集めることができたのです。

ルツは貧しい異邦人でした。

前述のモーセの律法の規定によれば、

ルツには畑の落ち穂を拾い集める権利が二重にあったことになります。

ここでもルツはナオミを助けました。

元々の地元民であるナオミのほうが異邦人であるルツよりも

ベツレヘムの畑に出やすかったはずです。

しかし、年老いたナオミには落ち穂拾いは荷が重過ぎたので、

代わりにルツが出かけて行ったのです。