2020年5月27日水曜日

「ルツ記」ガイドブック レビラト婚(その1)

レビラト婚(その1)

「ルツ記」は、
ダヴィデ王の祖先にあたるベツレヘム人エリメレクと
その妻ナオミについて語っています。
この夫婦は過酷な飢饉を逃れるためにカナンの地を離れて、
敵対民族であるモアブ人の地へと移住しました。
旧約聖書の「申命記」はモアブ人が主の会衆に加わることを禁じています。

「アンモンびととモアブびとは主の会衆に加わってはならない。
彼らの子孫は十代までも、いつまでも主の会衆に加わってはならない。
これはあなたがたがエジプトから出てきた時に、
彼らがパンと水を携えてあなたがたを道に迎えず、
アラム・ナハライムのペトルからベオルの子バラムを雇って、
あなたをのろわせようとしたからである。」
(「申命記」23章3〜4節、口語訳)

モアブは死海の東側に位置していました。
モアブの民はアブラハムの兄弟ロトの子孫でした
(「創世記」19章31〜38節)。

モアブの地でエリメレクと彼の二人の息子は死去しました。
しかし、やもめとなったナオミと、
ナオミの息子の妻で同じくやもめとなったモアブ人ルツは
ベツレヘムに帰郷する決心をしました。

ベツレヘムでルツはナオミの親戚にあたるボアズに出会い、
当時の慣習に従って彼に求婚しました。
求婚を受けたボアズはルツと結婚し、
さらに、売られたエリメレクの土地を自分の一族の土地として買い戻しました。

ルツとボアズの結婚は「レビラト婚」と呼ばれる形式のものでした。
この結婚については次の聖書の箇所が参考になるでしょう。

「兄弟が一緒に住んでいて、そのうちのひとりが死んで子のない時は、
その死んだ者の妻は出て、他人にとついではならない。
その夫の兄弟が彼女の所にはいり、めとって妻とし、
夫の兄弟としての道を彼女につくさなければならない。
そしてその女が初めに産む男の子に、死んだ兄弟の名を継がせ、
その名をイスラエルのうちに絶やさないようにしなければならない。
しかしその人が兄弟の妻をめとるのを好まないならば、
その兄弟の妻は町の門へ行って、長老たちに言わなければならない、
『わたしの夫の兄弟はその兄弟の名をイスラエルのうちに残すのを拒んで、
夫の兄弟としての道をつくすことを好みません』。
そのとき町の長老たちは彼を呼び寄せて、さとさなければならない。
もし彼が固執して、『わたしは彼女をめとることを好みません』と言うならば、
その兄弟の妻は長老たちの目の前で、彼のそばに行き、その足のくつを脱がせ、
その顔につばきして、答えて言わなければならない。
『兄弟の家をたてない者には、このようにすべきです』。
そして彼の家の名は、くつを脱がされた者の家と、
イスラエルのうちで呼ばれるであろう。」
(「申命記」25章5〜10節、口語訳)

もしもイスラエル人の夫が子を得ないまま死んだ場合には、
彼の兄弟か、あるいはその次に近い親戚が
そのやもめを妻として引き取らなければなりませんでした。
この新しい結婚を通して生まれた長男は「死んだ夫の息子」とみなされました。
このようなやり方によって、
死んだ夫の家系が途絶えることなく存続できるように取り計らわれたのです。