2020年5月20日水曜日

「ルツ記」ガイドブック 「ルツ記」を読むために 士師の時代、混迷の時代(その2)

 「ルツ記」を読むために


士師の時代、混迷の時代(その2)

セム語のひとつであるヘブライ語では
「語根」と呼ばれる三つのアルファベットが
それらから構成される様々な派生語に共通する基本的な意味を与えます。
これはセム語に共通する特徴です。

「ルツ記」の中心的なテーマのひとつは
「贖い」(人や物を元の持ち主に買い戻すこと)です。
この短い「ルツ記」には
「贖い」という意味をもつ語根(ギメル・アーレフ・ラーメド)
由来する単語が実に23回も繰り返し使用されています。
より具体的に言うと、
「贖う」という意味の動詞(ガーアル)が
13回(3章13節に4回、4章4節に6回、4章6節に3回)、
「贖う権利及び義務のある親族」という意味の分詞由来の名詞(ゴーエル)が
9回(2章20節、3章9節、3章12節(2回)、
4章1節、4章3節、4章6節、4章8節、4章14節)、
そして「贖う権利及び義務」(ゲウッラー)という意味の名詞が
2回(4章6節、4章7節)出てきます。

「ルツ記」のもうひとつのテーマは「神様による導き」です。
神様は苦難を通して私たちを導いてくださるのです。
人間の目にはまったく的外れに見えるような不思議な道筋さえも用いながら、
神様による導きは着々と実現されていきます。

「ルツ」はヘブライ語で「友」とか「友情」を意味する言葉です。
この言葉もまた「ルツ記」を読み解くための重要なキーワードになっています。

「ルツ記」は七週の祭と呼ばれるユダヤ人の祭で朗読される
旧約聖書の巻物のうちのひとつでした。
この祭はキリスト教のペンテコステ(聖霊降臨祭)と同じ時期に行われます。

聖書には「ルツ記」のほかにも
ユダヤ人の祭で朗読される旧約聖書の巻物が4つあります。
「エステル記」はプリム祭で、
「コヘレトの言葉」は仮庵の祭で、
「雅歌」は過越の祭で、
「哀歌」は神殿崩壊日でそれぞれ朗読されるならわしになっています。

七週の祭は春の収穫祭でもあります。
この祭で朗読される旧約聖書の巻物として
「ルツ記」が選ばれたのは自然であったとも言えます。
「ルツ記」には収穫作業の様子が具体的に描写されているからです。