2020年6月3日水曜日

「ルツ記」ガイドブック レビラト婚(その2)

 レビラト婚(その2)


現代の私たちには馴染みのないこの慣習の背景には、
先祖の土地に関するイスラエルの民に特有な考え方がありました。

「地は永代には売ってはならない。
地はわたしのものだからである。
あなたがたはわたしと共にいる寄留者、また旅びとである。
あなたがたの所有としたどのような土地でも、
その土地の買いもどしに応じなければならない。
あなたの兄弟が落ちぶれてその所有の地を売った時は、
彼の近親者がきて、兄弟の売ったものを買いもどさなければならない。
たといその人に、それを買いもどしてくれる人がいなくても、
その人が富み、自分でそれを買いもどすことができるようになったならば、
それを売ってからの年を数えて残りの分を買い手に返さなければならない。
そうすればその人はその所有の地に帰ることができる。
しかし、もしそれを買いもどすことができないならば、
その売った物はヨベルの年まで買い主の手にあり、
ヨベルにはもどされて、その人はその所有の地に帰ることができるであろう。」
(「レビ記」25章23〜28節、口語訳)

このように、本来すべての土地は主に属するものであり、
イスラエルの民はその土地を借りて農耕を営む寄留者にすぎません。
それゆえ、土地は人間が勝手に売買できるものではなく、
主からそれを借り受けた一族が代々受け継いでいくべきものとされたのです。
売買されてしまった土地は、50年間隔で訪れる「ヨベルの年」に
本来の所有者(主から借用した一族)に返還される決まりになっていました。
この特別な年には土地の返還を記念して喜びの祝祭が行われました
(「レビ記」25章)。
旧約聖書でこの慣習が適用された具体例としては
「ゼロペハデの娘たち」のケースが記されています(「民数記」36章)。

男性だけが仕事によって安定した収入を得ることができた
当時のイスラエルの世界では、
やもめと未婚女性の社会的・経済的立場は極めて弱いものでした。

「ルツ記」に出てくるレビラト婚という慣習につながる考え方は
イエス様の時代のユダヤ教にも残っていました。
このことは
サドカイ派の人がイエス様に次のような質問をしたことからも伺えます。

「「先生、モーセは、わたしたちのためにこう書いています、
『もし、ある人の兄が死んで、その残された妻に、子がない場合には、
弟はこの女をめとって、兄のために子をもうけねばならない』。
ここに、七人の兄弟がいました。
長男は妻をめとりましたが、子がなくて死に、
次男がその女をめとって、また子をもうけずに死に、
三男も同様でした。
こうして、七人ともみな子孫を残しませんでした。
最後にその女も死にました。
復活のとき、彼らが皆よみがえった場合、
この女はだれの妻なのでしょうか。
七人とも彼女を妻にしたのですが」。 
(「マルコによる福音書」12章19〜23節、口語訳)

たとえば、アフリカのケニヤのマサイ族では、
死んだ兄弟の妻であったやもめの世話をするという慣習が
今も続いていることが知られています。