2024年6月7日金曜日

「テモテへの第一の手紙」ガイドブック 「テモテへの第一の手紙」3章1〜7節 教会の牧師の有するべき特徴(その1)

 牧師の職務とそれを遂行するために必要とされる諸条件

「テモテへの第一の手紙」3章

 

教会の牧師の有するべき特徴

「テモテへの第一の手紙」3章1〜7節(その1)

 

前章でパウロは誰が教会の指導者、牧者として活動してはいけないか

について語りました。

今度は彼は教会の牧者に要求される15の特徴を列挙しています。

それらは次の10のグループに分けることができます。

 

1)ひとりの妻の夫であること(3章2節)


この特徴に反するケースとしては次のような5通りの例が考えられます。

パウロが反対しているのは次の5つのいずれかのケースになります。

 

A)未婚者を教会の牧者として選ぶこと


ギリシア正教会では司祭は輔祭になる前に

結婚するかしないかを決心しなければなりません。

ローマ・カトリック教会はそれとは異なる、

聖書的ではない極端なやりかたを採用しました。

神父は生涯独身を貫き、未婚のままでいなければならないという制度です。

しかしイエス様(「マタイによる福音書」19章10〜11節)も

パウロ(「コリントの信徒への第一の手紙」7章7節)も

人が結婚している状態をキリスト信仰者にとって最も自然な選択肢である

という立場をとっています。

 

B)一夫多妻制


ローマ法は夫が妾をもつこと(一夫多妻制)を承認していました。

一夫多妻制は初期の教会のキリスト信仰者たちの間にもあったかどうか

知られていませんが、

アフリカの多くの国々における海外伝道の現場では

今でも見うけられるものです。

 

C)再婚者を教会の牧者として選ぶこと


ユダヤ教では

夫がほぼどのような理由であれ妻を離縁して新たな妻を娶ることができる

という一夫多妻的な夫婦関係が見られました

(「マタイによる福音書」19章3〜9節および

「ローマの信徒への手紙」2章22節)。

 

これに対してパウロは、

離婚した者は前の結婚相手が生きている間は再婚してはならない

という立場を取りました

(「ローマの信徒への手紙」7章2〜3節、

「コリントの信徒への第一の手紙」7章39節)。

 

D)やもめの再婚


一般的にレビ族の祭司は寡婦と結婚することが許されていませんでした

(「レビ記」21章14節、「エゼキエル書」44章22節)。

教会教父テルトゥリアヌスはこの聖書の箇所が、

キリスト信仰者の牧師もまた寡婦と結婚してはならないことを教えている

と解釈しました。

しかしこの解釈は奇妙です。

パウロは結婚そのものを禁じるグノーシス主義者たちの考え方と

戦っていたからです。

もしもパウロの考えがテルトゥリアヌスの解釈通りのものだとしたら

「パウロがそれについてもっと明確に述べなかったのはなぜなのか」

という疑問が生じます。

 

なお現代の翻訳では「一度だけ結婚したことがある者」という具合に

「夫」という言葉を使用しないものさえ見受けられるようになってきました。

 

E)不実


この箇所を「結婚において忠実であること」と解釈する案もあります。

しかしこの解釈には反論できます。

結婚における忠実さは教会の指導者だけにではなく

キリスト信仰者全員にも当然要求されるものだからです。