「テモテへの第一の手紙」ガイドブック
異端の教え
三通の牧会書簡のどれもが異端の教えに対する警告を発しています。
すでに述べたように、ここで問題となっている異端は
「グノーシス主義」と呼ばれる神秘的な知(ギリシア語で「グノーシス」)
を強調する分派のことです。
牧会書簡で言及されている異端については
断片的なことしかわかっていませんが、
聖書の記述に基づいて以下その特徴を列挙してみます。
1)この異端の信者の大多数はもともとユダヤ人であったと思われる
(「テトスへの手紙」1章10節)
2)この異端ではモーセの律法が重要視されていた
(「テモテへの第一の手紙」1章7節、「テトスへの手紙」3章9節)
3)この異端では神話や系図が中心的な役割を占めていた
(「テモテへの第一の手紙」1章4節、「テトスへの手紙」1章14節)
4)この異端では禁欲主義が要求された
(「テモテへの第一の手紙」4章3節、
「テトスへの手紙」1章14〜15節)。
また結婚することさえ禁止された
(「テモテへの第一の手紙」4章3節)
5)この異端では「死者からの復活はすでに起きた」と主張された
(「テモテへの第二の手紙」2章18節)
6)この異端では神様の御国ではなく自己の利益が追求された
(「テモテへの第一の手紙」6章5節)
テモテとテトスはこの異端を
「わたしたちの主イエス・キリストの健全な言葉、ならびに信心にかなう教」
によって反駁しなければなりませんでした
(「テモテへの第一の手紙」6章3節)。