2019年2月13日水曜日

「ペテロの第一の手紙」ガイドブック 3章18〜22節 キリストの苦難と高挙(その2)

 3章18〜22節 キリストの苦難と高挙(その2)

3章19節には、
キリストが「獄に捕われている霊どものところに下って行き、
宣べ伝えることをされた」(口語訳)とあります。
宗教改革者マルティン・ルターはこの節を
新約聖書で理解するのが最も難しい箇所であるとみなし、
明瞭な説明を与えることができませんでした。
この節からは例えば次のような三つの疑問が生じるからです。

1)いつイエス様は宣べ伝えたのでしょうか?
人としてこの世にお生まれになる前だったのでしょうか?
それとも、死んだ後と復活する前の間の時期だったのでしょうか?
あるいは、復活の後と天に昇られる前の間の時期だったのでしょうか?

二番目と三番目はどちらも可能な選択肢であると考えられます。

2)誰に対してイエス様は宣べ伝えたのでしょうか?
堕落した天使たちに対してでしょうか?
天使たち一般に対してでしょうか?
ノアの家族に対してでしょうか?
それとも、陰府の住民全員に対してでしょうか?

この箇所の文脈に基づくかぎり、
最後の二つの選択肢は可能なものであると言えましょう。

3)何をイエス様は宣べ伝えたのでしょうか?
救いでしょうか?
それとも敵に対する勝利でしょうか?

一番目の選択肢は
上掲の「ペテロの第一の手紙」4章6節と調和させて理解することも可能です。
これによれば、イエス様が陰府で宣べ伝えたのは福音であり、
宣べ伝えた相手は、生前に福音を聞く機会のなかった人々です。

しかし、3章19節と4章6節は互いに異なる内容を語っています。
キリストが陰府で悪魔の支配に対して勝利宣言なさった、
ということが3章19節の内容である、
という説明が最も有力であると思われます。

このメッセージによって使徒ペテロは手紙の読者たちを慰めようとしたのでしょう。