パウロの計画(その1)
ローマを通ってヒスパニア(現在のイベリア半島の地域)に出かける前に、
パウロはエルサレムに行って、
異邦人キリスト信仰者たちが集めた捧げ物(献金)を
エルサレムの母教会の貧しい信徒たちに持って行かなければなりませんでした。
このエルサレム訪問は、
誰にでも任せられるような、ありふれた旅行ではありませんでした。
パウロにはたくさんやるべきことがあったのです。
エルサレムの教会の信徒たちの会議で、
パウロの宣教している、キリスト信仰者の自由についての福音は
承認を受けていました。
この福音によれば、
異邦人キリスト信仰者はモーセの律法に従う必要がありません。
パウロが受け入れた唯一の義務は、
異邦人キリスト信仰者たちが力を合わせて、
エルサレムの貧しい信徒たちを経済的に援助することでした
(「ガラテアの信徒への手紙」2章10節)。
パウロは、あらゆるところで真面目にこの義務を履行しました。
それに対して、コリントやその他のところでは、
キリスト者の自由にかかわる福音に反対する、
律法に執心する人々が幾度となく出現しました。
パウロはここで敢然と彼らに立ち向かいます。
パウロは自分に課せられた約束をちゃんと守りましたが、
エルサレム側でも(パウロの福音を認めるという)約束を
守る気があるのでしょうか。
エルサレム訪問は緊迫したものになるのがわかっていたので、
誰か他の人にこの仕事を任せるわけにはいかなかったのです。
ユダヤ人たちが彼の命を狙っているのを承知の上で、
パウロは自分でエルサレムに行くしかありませんでした。
あるいはむしろ、
パウロは自分で乗り込むことで、
福音を受け入れた異邦人たちに対して
ユダヤ人たちが熱情あるいは羨望の念を抱くように
仕向けたかったのかもしれません
(「ローマの信徒への手紙」11章13〜14節を参照してください)。