2023年12月12日火曜日

「テモテへの第一の手紙」ガイドブック 「テモテへの第一の手紙」1章3〜11節 偽りの信仰と正しい信仰(その1)

 偽りの信仰と正しい信仰(その1)

「テモテへの第一の手紙」1章3〜11節

 

「わたしがマケドニヤに向かって出発する際、頼んでおいたように、

あなたはエペソにとどまっていて、ある人々に、違った教を説くことをせず、

作り話やはてしのない系図などに気をとられることもないように、命じなさい。

そのようなことは信仰による神の務を果すものではなく、

むしろ論議を引き起させるだけのものである。」

(「テモテへの第一の手紙」1章3〜4節、口語訳)

 

いつもならば、パウロの手紙では

はじめのあいさつの後に感謝と祈りが続きます

(「コリントの信徒への第一の手紙」1章4〜9節、

「エフェソの信徒への手紙」1章3〜14節、

「コロサイの信徒への手紙」1章3〜8節)。

しかしこの手紙ではそうではありません。

 

パウロはテモテをエフェソに残しマケドニヤへの旅を続けました(1章3節)。

「テモテへの第一の手紙」は

マケドニヤからエフェソに送られたものと思われます。

「使徒言行録」はパウロのこの旅について何も記していません。

しかしこの旅はルカが「使徒言行録」で描いた出来事以後のことなので

当然とも言えます。

 

テモテの使命は

エフェソの教会に入り込んだ偽りの教えが蔓延するのを阻止することでした。

 

エフェソの教会の内部から偽教師たちが現れることを

パウロはすでに5年ほど前から予言していました

(「使徒言行録」20章29〜31節)。


正しい福音はひとつしかなく、

その福音から逸脱することは偽りの教えにすり替わることを意味します

(例えば「コリントの信徒への第二の手紙」11章1〜4節、

「ガラテアの信徒への手紙」1章6節、

「テモテへの第一の手紙」4章1〜8節、6章3〜5、20、21節、

「テトスへの手紙」1章13〜16節)。

 

エフェソの教会にあらわれた異端がどのようなものであったか

正確には知られていません。

牧会書簡の中で言及されている

異端のいくつかの特徴についてはすでに述べました。

おそらくこの異端はグノーシス主義か、

その萌芽のようなものだったのではないかと思われます。

この異端は隠された知識(ギリシア語で「グノーシス」)の重要性を強調し、

この知識の力を借りることで

物質世界の呪縛から脱して諸霊の世界に上昇できると喧伝しました。

また系図を読み取ることで霊界を探ろうとしました。

 

エフェソの教会はわずか8年ほど前に設立されたばかりでした

(「使徒言行録」19章1節〜20章1節)。

パウロがエフェソの教会で2年ほどかけて正しい福音を教えたにもかかわらず

(「使徒言行録」19章10節)、

パウロたちがエフェソを出発するとまもなく異端が入り込んできたのです。

 

神様が福音の御業を行われるところでは

魂の敵(すなわち悪魔)も破壊の仕業を開始します。

異端と戦う最も効果的なやりかたは正しい教えを宣べ伝えることです

(1章8節)。

 

「異端者は、一、二度、訓戒を加えた上で退けなさい。」

(「テトスへの手紙」3章10節、口語訳)

 

この「テトスへの手紙」の箇所については

「異端者は退けなさい」という部分だけを取り出して

強調されることがしばしば見受けられます。


しかしこの箇所には

「一、二度、訓戒を加えた上で」という但し書きがついている点も

見逃すべきではありません。


神様は異端に陥ったキリスト信仰者たちのことも

救いたいと望んでおられるのです!