「ハバクク書」ガイドブック
「ハバクク書」3章3〜15節 万物を造り歴史を導かれるお方(その4)
「ハバクク書」3章13節にでてくる「あなたの油そそいだ者」
という表現はユダの王を指しています。
イスラエルの民がユダ王国とイスラエル王国に分裂する以前にも、
イスラエルの王たちは油を注がれることで
正式に王と認められるならわしがありました
(「サムエル記上」10章1節、16章12〜13節)。
しかし、この「ハバクク書」の箇所には
ヘブライ語で「油注がれた者」という意味をもつ
「メシア」に関連する意味も含まれているとみることができます。
旧約聖書において王は民の象徴的な存在であったことを
ここで思い起こしましょう。
例えば、王の命運はそのまま民の命運にも直結するものでした
(「イザヤ書」7章8〜9節)。
「悪しき者の頭」(3章13節)は
イスラエルの民を追撃したエジプトのファラオを意味している可能性があります
(「出エジプト記」14章5〜9節)。
とはいえ、イスラエルの民の歴史からは
他にも多数の敵国の王たちを神様の敵対者の予型あるいは基本型の実例として
挙げることができます。
「ハバクク書」3章15節は、
イスラエルの民が紅海を横断できたのに
彼らを追ってきたエジプトのファラオの軍勢は海に呑み込まれてしまった
という奇跡に関連しています(「出エジプト記」14章26〜31節)。
「ハバクク書」3章10〜15節は
「詩篇」77篇17〜21節(口語訳では16〜20節)とよく似ています。
それゆえ、この「詩篇」77篇こそが
預言者ハバククの讃歌の基点となったのではないかと主張されることもあります。