2019年6月10日月曜日

「ペテロの第一の手紙」ガイドブック 5章12〜14節 終わりの挨拶

 5章12〜14節 終わりの挨拶

この手紙の終わりにある「挨拶」には
幾つかの興味深い名前が記されています。
たとえば、「シルワノ」という人物は新約聖書で「シラス」という略名で
呼ばれているのと同一人物である可能性が高いです。
もしそうだとすると、
「使徒言行録」16章に登場するパウロの同僚「シラス」は、
この手紙の書かれた段階ではペテロと一緒に伝道していたとも解釈できます。

ちょうどこの挨拶の箇所でペテロは、
彼の手紙の受け取り手たちが日々の信仰生活の中で享受している恵みが
神様のまことの恵みに由来するものであることを強調しています。

シラスはパウロと共に福音を宣べ伝えました。
その同じ福音を、ペテロもまた自ら認めて伝えようとしています。
これには、パウロやペテロと一緒に福音伝道に従事した経験のある
シラスの立場も関係しているのかもしれません。

当時パウロと行動を共にしていたもう一人の人物はマルコです。
「使徒言行録」12章25節および15章37〜39節には、
パウロとマルコの間で起きた衝突が記されています。
しかし、「フィレモンへの手紙」24節や
「コロサイの信徒への手紙」4章10節の記述によれば、
彼らの間の関係は後になって修復されたように見えます。

伝承によれば、マルコはペテロの通訳として旅に同行し、
その折に聞いたことがらに基づいてローマで福音書を書いたとも言われます。
もちろん、この伝承については何も確実なことは言えません。
ともあれ、ペテロはこの「ペテロの第一の手紙」を書いた時点では、
マルコと共にローマにいます(5章13節)。「
バビロン」とはローマの暗喩です。

「マルコによる福音書」はペテロの視点から書かれているとよく言われます。
これもまた「マルコによる福音書」とペテロの間の関係性を示唆しています。
その一方で、「マルコによる福音書」はイエス様の身内や、
後にエルサレムの教会の初期の指導者となる主の兄弟ヤコブに対しては
まったく興味を示していません。
ですから、「マルコによる福音書」の飾り気のない記述にも、
そして「ペテロの第一の手紙」にも、
年老いた使徒の同じ温かな肉声を聞き取ることができる、
と考えてもよいのではないでしょうか。



以上で「ペテロの第一の手紙」ガイドブックの配信を終わります。