2018年8月8日水曜日

「ペテロの第一の手紙」ガイドブック 1章1〜2節 手紙の差出人と受け取り手

「ペテロの第一の手紙」第1章

1章1〜2節 手紙の差出人と受け取り手

古典古代における慣習に則って、
書き手の名前がこの手紙の冒頭に記されています。
書き手の名は使徒ペテロです。
すでに冒頭の数節において、
この手紙全体に通底するテーマが登場しています。
すなわち、
苦しみを受けている寄留者であり
神様の選ばれた民でもある人々に向けて
この手紙は書かれた、ということです。

「寄留者」としての生き方は信仰の教えに基づくものであり、
手紙の受け取り手たちの日々の生活と深い関わりがありました。
手紙の受け取り手たちは小アジアに偏在していました。
彼らはユダヤ人であるかどうかには関わりなく、
今や少数派として生きることを余儀なくされていました。
彼らの置かれた状態は旧約の民のそれと似ていました。
主の民は荒野を横断して約束の地への帰還の旅を続けました。
そして、そこに到着するまでは、
他所の土地に慣れ親しんでしまうことは許されないことでした。
この生き方は、当時も今もキリスト信仰者にとっての模範となるものです。

その一方で、手紙の受け取り手たちは、
たんに苦境に立たされている寄留者だっただけではなく、
全能なる神様が選び分かち愛してくださる民でもありました。
神様がこの世のはじまる前に用意なさった救いの計画を自ら実現され、
彼らをイエス様の血によって聖別なさったのです。
「イエス・キリストの血の注ぎを受けるために」(1章2節)という表現は、
この手紙においてこれから展開されていくことになる
最も重要なテーマを予告しています。
すなわち、私たちはキリストの血によって清められている、ということです。