2018年6月5日火曜日

「ペテロの第一の手紙」ガイドブック 誰が、誰に宛てて、どうして、この手紙を書いたのでしょうか?

誰が、誰に宛てて、どうして、この手紙を書いたのでしょうか?

手紙に明記されている書き手の名は、
イエス・キリストの使徒ペテロです。
彼は手紙の受け取り手のことを
「神様によって選ばれた寄留の民」と表現しています。

「イエス・キリストの使徒ペテロから、
ポント、ガラテヤ、カパドキヤ、アジヤおよびビテニヤに
離散し寄留している人たち、すなわち、
イエス・キリストに従い、かつ、その血のそそぎを受けるために、
父なる神の予知されたところによって選ばれ、
御霊のきよめにあずかっている人たちへ。
恵みと平安とが、あなたがたに豊かに加わるように。」
(「ペテロの第一の手紙」1章1〜2節、口語訳)

手紙のこの箇所には、小アジア地方の(全てではないですが)
多数のローマの属州の名が記されています。
ということは、
手紙の受け取り手たちは現在のトルコの地域に居住していたことになります。
彼らの大多数は
異邦人(つまりユダヤ人ではない)キリスト信仰者であったと思われます。
手紙の成立時期を正確に知るのは困難です。
唯一の手がかりは迫害です。
ローマ帝国全域にわたる最初の大規模な迫害は
皇帝ドミティアヌスによるものです。
それは西暦90年代に起こりました。
すでにそれ以前にペテロは殉教の死を遂げており、
死に勝利した天の御国の教会の一員に加えられていました。
当時のキリスト信仰者たちはすでに以前から各地で憎悪の対象となっていました。
ですから、
この手紙は最初の大規模な迫害の起こる以前に書かれていた可能性もあります。
この手紙を書き取ったのはシルワノという名の人物です(5章12節)。
彼はパウロの古くからの同僚で共に牢獄生活を送ったシラスと
同一人物であったとも考えられます(「使徒言行録」5章12節)。
このことについてはガイドブックの終わりで取り上げることにします。