2023年10月4日水曜日

「テモテへの第一の手紙」ガイドブック 牧会書簡(その1)

 「テモテへの第一の手紙」ガイドブック

 

フィンランド語版著者

パシ・フヤネン (フィンランド・ルーテル福音協会宣教師、牧師)

日本語版翻訳・編集者

高木賢 (フィンランド・ルーテル福音協会、神学修士)

 

聖書の引用は口語訳によっています。

「1章5節」などのように章節のみが記されているものは

それが「テモテへの第一の手紙」からの引用であることを示しています。

日本語訳では一部表現などを編集し、聖書の箇所を適宜明示しています。

聖書の原語にかかわる記述箇所はすべて原書

(ギリシア語新約聖書とヘブライ語旧約聖書)に遡って内容を確認しています。

 

 

 

内容一覧

 

序論および「テモテへの第一の手紙」1章

異端の教えに対する警告                     

 

「テモテへの第一の手紙」2章

キリスト教会に与える生き方の指針

 

「テモテへの第一の手紙」3章

牧師の職務とそれを遂行するために必要とされる諸条件

 

「テモテへの第一の手紙」4章

惑わされてはいけない!

 

「テモテへの第一の手紙」5章

やもめやその他の境遇の人々への生活指針

 

「テモテへの第一の手紙」6章

職務を忠実に果たすことへの奨励

 

 

 

異端の教えに対する警告

牧会書簡および「テモテへの第一の手紙」についての概説、

「テモテへの第一の手紙」1章

 

 

牧会書簡(その1)

 

「テモテへの第一の手紙」、「テモテへの第二の手紙」、「テトスへの手紙」

というパウロの三通の手紙は合わせて「牧会書簡」(英語でPastoral epistles

と呼ばれています。

これらの手紙には教会を教え導いていくための様々な指針が記されています。

牧会する「牧者」(英語でPastor)という言葉は

羊飼いを意味するラテン語に由来しています。

これらの手紙は1700年代以来「牧会書簡」と呼ばれてきました。

 

元々これらの手紙の宛先は教会ではなく

二つの教会の指導者(テモテとテトス)でした。

とはいえ、これらは

例えば「フィレモンへの手紙」のような普通の個人宛の手紙ではなく、

教会宛の手紙と個人宛の手紙の中間に位置するような性格の手紙でした。

 

テモテとテトスは使徒ではなく、

パウロの始めた伝道を受け継いだ同僚でした。

彼らのような伝道の継承者たちは

すでにパウロの存命中にもしばしばパウロの「代行者」の役割を担いました。

 

牧会書簡は新約聖書の正典(カノン)に含まれています。

聖霊様がこれらの手紙を通して

キリスト信仰者の教会生活にとって重要な指示を与えておられることを

世界の全キリスト教会が一致して公式に認めたからです。


 

牧会書簡のテーマを総括する鍵となるのは

次に引用する「テモテへの第一の手紙」3章15節であると言えます。

 

「万一わたしが遅れる場合には、

神の家でいかに生活すべきかを、

あなたに知ってもらいたいからである。

神の家というのは、生ける神の教会のことであって、

それは真理の柱、真理の基礎なのである。」

(「テモテへの第一の手紙」3章15節、口語訳)

 

牧会書簡には

教会生活が神様の御言葉に基づく堅固な礎の上に形成されるために必要な

様々な指示が含まれています。

 

牧会書簡の主旨は異端の教えから正しい教えを守ることです

(「テモテへの第一の手紙」6章3節)。

これらの手紙に共通して用いられているギリシア語の術語に

「エウセベイア」(「テトスへの手紙」1章1節)という言葉があり、

日本語では「宗教」とか「信仰心」などと訳すことができます

(口語訳では「信心」と訳されています)。